水道民営化(水道事業民営化)。導入している自治体は?【2020年最新動向を検査会社が解説】

水道民営化で水道料金は高くなるか


最近よく聞く水道民営化。日本の水道事情は今、大きな転換期を迎えています。

ここでは、水道事業民営化について、国内外の最新動向やメリットやデメリットを交えて検査会社が解説します。

改正水道法とは

【水道法とは】

1957年(昭和32年)に制定された水道(上水道)事業について定める日本の法律です。清浄で低廉な水の供給を図り、公衆衛生の向上と生活環境の改善とに寄与することを目的としています。

【改正のポイント】

水道事業の基盤強化の一つとして、官民連携して取り組みやすい環境を整えるため、なかでもコンセッション方式と呼ばれる民営化の手法を自治体が導入しやすいように法律が改正されました。
コンセッション方式とは・・・施設の所有権は自治体が所有したまま、運営権(水道事業の運営)を民間企業に委ねる方式。運営が民間事業者になることにより、安定的で自由度が高い運営が可能になり、利用者のニーズも反映した高いサービスが提供できるとされています。

なぜ今、水道民営化(水道事業民営化)?

【理由1】水道管の老朽化・保守による事業維持のためのコストが増加したため

水道管路の法定耐用年数は40年とされており、古く老朽化した水道管は交換していく必要がありますが、高度経済成長期に整備された分の交換時期が今やってきていて、いまだに全ては交換しきれていない状態です。頻発する震災などから水道管の耐震性の問題も挙げられており、耐震適合性のある管路は全国で40%ほどしかないのが現状です。
また、地域の地理状況や人口密集具合により、水道事業の費用や管理規模は大きく異なります。短い距離の水道管でたくさんの世帯に効率よく供給できる都市も、長い距離の水道管で数世帯に供給する地方も、同じように水道管の老朽化・保守による事業維持費は大きく異なります。
このように、水道事業にかかるコストが増加しているため、自治体での運営が厳しい状態になっています。

【理由2】人口減少による水道料金収入の減少

近年は少子高齢化・人口減少にともなって水道水の消費量が減少しており、水道料金の収益が減少しています。
水道事業は基本的には水道料金で運営されているため、収益が減少した分、コストや人員を削減しなければならず、現在、水道事業の体制が弱体化しています。体制の改善のためには水道料金を上げなければ、今後の水道の安定供給は難しいと言われています。

日本の実際の動き〜上水・下水のコンセッション方式導入

【実例紹介】水道事業の民営化(運営委託)を取り入れた(あるいは、検討している)自治体

1) 浜松市・・・2018年4月に下水道事業にて全国初となるコンセッション方式を一部導入。
水道事業にも導入を検討しているが、市民からの理解が得られずに2019年1月に検討も含め導入を当面延期することを発表。

2) 宮城県・・・上水、工業用水、下水の計9事業の運営権を一括に民間企業へ譲渡するコンセッション方式を採用。2020年秋に事業者を決定し、2021年度中に事業をスタートの予定。

水道事業民営化に対する市民の不安

民間企業に運営権を持たせ、その技術を取り入れることでコストの削減が図れるのではないかという期待の一方で、営利団体である民間企業に委託することで「水道料金の上昇」や「水質の悪化」という不安の声が上がっています。
また、利益を求めるために採算性の低い地域が見捨てられるのではないか、コスト削減のため老朽化した水道管の補修を見送られるのではないかなども懸念されています。

【市民の声をうけて・・・】

浜松市では、条例で水道料金の上限を設定し、その中で民間企業(運営事業者)が料金を設定することを想定しています。そのため、民間企業(運営事業者)は独断で上限を超える料金設定はできなくなります。
・運営は民間企業に委ねられるものの、水道法に基づく水質基準は変わらず存在し、その基準を満たすための水質検査も従来どおり行われると考えられるため、極端な水質悪化にはつながらないのではないかと考えられます。

海外の事例

【フランス】

フランスでは、民営化と同時に水道料金が値上げされたことで市民の不満が高まり、2010年まで行われていた民間の水供給が再公営化されました。

【ボリビア】

水道事業を民営化しようとしたところ、水道料金値上げに伴うデモが起き、民営化を撤回することになりました。

【イギリスのイングランドとウェールズ】

イギリスのイングランドとウェールズでは、水道を民営化したことで以前よりも、水質が改善され、管路漏水量も改善されました。

 


以上、水道民営化の解説でした。

日本の水道インフラは世界トップレベルですが、高度経済成長期を経て更新の時期を迎えつつあります。
水は国民生活そのもの。日本の水道の特徴である『水質の高さ』と『低廉さ』をこれからも守り受け継ぐため、地域ごとに適切な水道供給の形を作っていくことが今求められているようです。

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