レジオネラという菌。土の常在菌で水循環施設で増殖しやすい、毎年60名近くが亡くなる危険な病原菌。

培養法で生育したレジオネラのコロニーレジオネラは土や埃、川や湖などに常在する菌ですが、水を循環させる施設(浴場、冷却塔)では増殖しやすく、その施設や設備を利用したり近くを通りがかった人がレジオネラに感染することがあります。

レジオネラ属菌が危険な菌であることは意外に認知度が低く、厚生労働省や自治体などが啓発を続けています。

ここでは、施設管理者だけでなく一般のご家庭向けにレジオネラ菌の『知らないと危険なこと』と『レジオネラ対策』を解説します。

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国内で毎年60名前後が亡くなる危険な病原菌

レジオネラ属菌は日本で毎年60名近くが亡くなる致死率の高い病原菌です。単純な比較はできませんが、病原菌として有名なO157(を含む腸管出血性大腸菌)の年間死者数を大きく上回っています。

レジオネラ肺炎の死亡率は15〜30%。レジオネラ症とは?

レジオネラ症とはレジオネラ属菌が原因で起こる四類感染症に分類される疾患(感染症)です。

レジオネラ肺炎

劇症型肺炎と言われており、急激に重症(呼吸困難や意識障害など)になって死に至るケースがあるのがレジオネラ肺炎の最大の特徴です。発症した場合の死亡率は15%〜30%と非常に高い割合です。

抗生物質は有効ですが、発見・治療が遅れると致死率は60%以上にもなります。適切に治療されれば致死率は7%程度とされています(東京都健康安全研究センター「レジオネラ症」より)。

免疫力が低い乳幼児や高齢者、病気の人が発症しやすいことが分かっていますが、健常者でも過労、疲労等により体力が低下している場合、レジオネラ症を発病しやすい言われています。

ポンティアック熱

肺炎にはならず、自然に数日後に治る場合が多い一過性のポンティアック熱もあります。


これらを総称してレジオネラ症とよびます。

レジオネラ属菌の感染経路

感染経路は、飛沫感染エアロゾルを介した比較的狭い範囲での空気感染です。レジオネラ属菌が増殖した水循環の設備から出たエアロゾルやシャワーなどから発生した細かい水を吸引、吸入して感染が成立します。
ヒト同士の感染はないとされます。また皮膚から入ったりすることもありません。

レジオネラ属菌の対策の基本は消毒と検査(シーン別対策)

そんなレジオネラ菌ですが、温泉・デイサービスなどの入浴施設、24時間風呂、冷却塔(クーリングタワー)などで、施設管理やレジオネラ対策が不十分な場合、増殖するケースがあります。

レジオネラ対策は塩素消毒が基本となります。またレジオネラ属菌の有無を判断するため定期的に検査を行います。
また、配管内で、レジオネラ属菌がアメーバとバイオフィルムを形成すると、塩素消毒で殺菌することが難しい場合があることも指摘されています。ぬめりなどが浴槽の床や配管内に発生しないように定期的な清掃、消毒によりバイオフィルムを除去し、レジオネラ属菌の宿主(すみか)となるアメーバを定着させないことが重要です。
さらに泉質によっては塩素を通常の規定量添加しても温泉成分と塩素が反応することで消毒効果がすぐに消耗され、微生物に対して十分な消毒効果が得られないケースがあることも分かっています。
 

入浴施設

入浴施設は浴槽ごとに定期的にレジオネラ検査を実施します(たとえば露天風呂、ヒノキ風呂、ジャグジー風呂が男湯女湯それぞれにあるとしたら、3×2=6ヶ所それぞれの浴槽水を定期的に検査します。
以下の厚生労働省のパンフレットが参考になります。レジオネラの宿主となるアメーバのことにも触れられています。

レジオネラ



レジオネラ検査

 

浴槽水の管理について

  1. 満ぱいの状態を保ち、溢水(いっすい、湯をあふれさせること)させて清潔を維持する。
  2. 循環ろ過装置を使用していない浴槽水および毎日完全換水型循環浴槽水は、毎日完全換水を行う。連日使用型循環浴槽水の場合は1週間に1回以上定期的に完全換水を行う。
  3. 塩素剤による場合は、
    • 塩素剤は、湯が循環ろ過装置内に入る直前に注入(投入)することが望ましい。
    • 遊離残留塩素濃度の測定を実施し、0.2〜0.4mg/Lを1日2時間以上保つことが望ましい。
  4. 温泉の泉質のため塩素消毒ができない場合は、
    • オゾン殺菌または紫外線殺菌により消毒。
    • 泉質等に影響を与えない範囲で塩素消毒を併用することが望ましい。

出典:「よく知ろう 「レジオネラ症」 とその防止対策」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/legionella/dl/pamph.pdf)を加工して作成


24時間風呂

24時間いつでも入浴できて、循環式なので、水が節約できて、掃除の手間もないということで、普及してきましたが、正しい管理や消毒を怠ると、ろ過部や配管、槽内にレジオネラ属菌が増殖してしまいます。とくに常に42度前後で維持される浴槽内はレジオネラ属菌の増殖に最適であり、なかには基準値をはるかに上回る大量のレジオネラ属菌が増殖していたことが検査で分かるケースもあります。

対策は2つあり、1つ目はメーカーの説明書どおりに適切な管理を行うことです。2つ目は浴槽水中にレジオネラ属菌がいるかどうか検査することです。

適切な管理方法の一例は以下です。

  1. フィルターをこまめに洗浄する。
  2. 殺菌装置(紫外線やオゾンなど)の適切な時間設定する、殺菌装置のメンテナンスする。
  3. 定期的に浴槽水を換水。なるべく短期間で行う。
  4. 浴槽水をシャワーに繋げない、使用しない。
  5. バブルジェットなどは使用しない。
※メーカーにより適切な管理方法は異なりますので、必ずメーカーのマニュアルをご確認ください。

水冷式冷却塔・クーリングタワー

冷却塔・クーリングタワーは空調設備として、多くの建物やビルの屋上や建物の脇に設置されています。この装置は水の蒸発を利用して循環水を冷却する装置で、冷房や冷凍機の温度を維持するために必須の機械です。作動中に冷却水が飛散します。

この冷却水やその接触箇所でレジオネラが増殖する場合があるので、設置・管理者は定期的に水質検査を行い、冷却塔・クーリングタワーの洗浄・殺菌を行い、レジオネラ対策を維持する必要があります。

レジオネラ属菌という呼び方

マニュアルや検査結果には「レジオネラ属菌」という表記がなされますが、これはレジオネラが大腸菌(エシェリキア・コリ、Escherichia coli。短くイ−・コリとも)やピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ、Helicobacter pylori)のように、ただ一種の菌種で言い表せないグループだからです。
レジオネラ属菌には60種類の菌種が属し、複数の菌種に病原性があることが分かっています。なかでも有名なのがレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)です。

これらをまとめてレジオネラ属菌と表現します。検査においても、これらをまとめて検出できる検査方法が採用されています。

レジオネラ属菌の検査

このお風呂にレジオネラはいるのか?この浴場の配管にレジオネラはいるのか?そんな疑問に答えを出せるのは検査だけ。

義務のない施設などでも、レジオネラが気になっているなら一度是非検査をお勧めします。

検査の種類は大きく分けて2種類あります。

PCR

遺伝子を調べる迅速検査で、その日のうちに結果が分かる場合もあります。
近年各検査メーカーによるPCRによるレジオネラ属菌検査が確立されつつあるものの、まだ一般的には普及していません。
弊社でもすでに導入しているため、対応は可能です。PCR検査をご希望の方は事前にご相談ください(→お問い合わせフォーム)。

培養法

以前からの主流である培地による培養法検査です。
レジオネラ属菌は生育速度が遅く、7日間の培養によって生育したコロニーを、その特徴や性状を検査してレジオネラ属菌であるかどうか確定します。そのため、検査に1週間以上かかりますが、全国の9割以上の浴場施設、冷却塔の検査で培養法が用いられています。
環境未来WEBでもお手軽に以下の商品でレジオネラ属菌の検査ができます。



 
制作協力 hinokibunko

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